寝言が聞きたくて(セルフ盗聴)

親知らず抜いて一ヶ月。今はもうガンガンに顎を開けられます。

ただし親知らず跡地はまだぽっかり穴を開けているので、モノが挟まる挟まる。抜いたはずの親知らず部分に、私親知らずですよ?みたいな顔して食べ物が埋まってる。

 

さて、先日友人と旅行へ行った。

以前から人に「寝言言ってたよ」って言われるたちだったんだけど、今回の旅行では毎日毎日、しかも手振りまで交えて寝言を言っていたという報告を受けて不安になった。

寝言って無意識なので何をしゃべってるかコントロールできないのが怖いよね。それでも本人にとって隠したいことや秘密については、本能的に寝言では言わないらしいけど。

 

「むにゃむにゃ」とかじゃなくはっきり言葉を発してるらしいので、自分の寝言を聞いてみたい!と思って、寝ている間の振動や音を感知して録音、グラフ化してくれる「あなたが寝てる間に」というアプリを入れてみた。

録音や振動感知の精度はかなり高い。

このアプリはずうっと録音しっぱなしというわけではなく、寝返りの振動や何かの物音が感知された時間だけピンポイントで記録してくれる。

今朝で合計3回の夜を聞いてみたけど、いまだ寝言らしい寝言は聞けず。ざんねん。

だいたい、旅行中とか他人と同じ部屋で眠ると、私すごく夢を見るんだよね。だから夢の内容に即して色々寝言を言ってるのを聞かれるんだと思う。

 

それでも無意識の間の出来事が追体験できるのはなんだかすっごく不思議で、夜の音を聞き覗く感じは、ちょっとスリリングで興奮する。対象は自分自身なんだけど。セルフ盗聴。

唯一確認できた寝言らしきものは、「ん?う〜ん…うん?」という相づちみたいなの。これだけでも自分の寝言を聞くのは可笑しくて笑ってしまった。あとは「ゔぅ〜ん…」と苦しそうに結構うなってる。いびきはかいてないようで安心した。

そしてアプリを使ってみてわかったけど、寝返りってすごい頻度でしてる!ただの身じろぎの可能性もあるけど、10分に一回はしてる。パッタンパッタン。

それから、たまに「ポリポリ」って身体のどこかを掻いてる音も聞ける。これも結構笑ってしまう。

 

アプリ使用初日は、音を拾う感度の設定加減や、回しっぱなしの扇風機の近くにipad を置いていたこともあって、睡眠時間6時間のほぼ全部録音していたので、動いてないし、声を出してないときの音も聞けた。

ひっそりと静まった夜の空気と、「すー。すー。」と規則正しい自分の寝息、夜中回り続ける扇風機の音。

そういった夜の空気のなかの自分の寝息を聴いていると、寝ているときの人間って半分、死の世界にいるようなものだな、と感じた。聴き続けてると、ちょっと怖いような感覚もしてくる。

意識がないけど、死んでいない。生きるための身体の運動は止まっていないけど、動かない。でもときどき無意識のまま寝返ってみたり、かゆいところを掻いたりする。

他人のような距離感を感じる。同時に、無意識下の行動にかわいらしさも感じる。

朝が近づくにつれ、チュンチュンと鳴き始める鳥の声、蝉の鳴き声、新聞配達のバイクの音が聞こえ始める。一日の始まりが、白々と明けていく朝の光が感じられる。

眠りに死んでた世界が、生き返っていく感じ。

そして、目覚ましの音が鳴って、不満そうな自分の寝起きの声が聞こえる。おかえんなさいって感じ。睡眠って一回ごとに死んで生き返ってるようなものだなって思った。

「寝ている人の姿を見るのが嫌い。死んでるみたいだから」って人の話を見かけたことがあって、当時はあまりわからなかったけど、今は結構その感覚がわかる。

今夜は寝言が録れるといいな。