WOOD JOB! 土地と時の流れに身をおくこと

『WOOD JOB !〜神去なあなあ日常〜』を観てきました。

大学受験に失敗した都会の少年が、爽やかに微笑む長澤まさみのイメージポスターにつられて、1年間の林業研修で地方に住まう話。

 

森の湿った土や木、澄んだ空気の香りが、スクリーンから漂ってきそうな緑深い情景ももちろんよかったけど、その地やその仕事に身を浸す人の姿、暮らしが伝わる心震えた短いシーンがあった。

不純な動機でふらりとやってきた林業研修、脱出する機会を何度も狙っていたような少年は、いつしか春も夏も超えて、くったりしたネックウォーマーを身につけてトラックの荷台に揺られている。きっと一日の労働に疲れていて、体はだらしなくトラックに預けられている。それでもその顔は満足げで。ふいに枝の切れ端を手に取って匂いを吸い込むと、もっと表情はゆるんで、歌が口からまろびでる。その歌は木こりの人たちの民謡で、労働歌で、ゆるゆると周りの仕事仲間の男たちの歌声も重なって、山にこだまする。

 

なんとなく、緑の匂いを吸い込んで、満たされたように歌が出てくる。温泉につかって、思わずその心地よさに息を吐き出すように、自然と歌がこぼれでる。野太い男たちの声がしみじみと、何世代も前の人たちから植えて世話をしてきた森に響き渡る。

その身体性とか、永い時のなかでの連関とか、状況の変化とかが言葉もなく描かれていてちょうしみじみとよいシーン。

 

 

山での暮らしは、都会と違って「神さま」っぽいものが生活に近くある。もやっとした神さまは、豊かだけど、少しこわい。地方の暮らしでのそういうほんのりした畏怖感みたいなのと、生活のなかにさまざまな形で存在する儀式性は、東京に住んでると実感できないけれど、映像や読み物で触れるとすごく惹かれる。

 

 

あと、フィクションだからかもしれないけど、田舎の人って、身もフタもない!厳しい!ってよく感じる笑

あんな悪路をどんどんバイクで乗り回す、髪の湿度0%なパサついた長澤まさみ、他で見られますか!?せめてバイクには手袋して乗ってくれ!ハラハラする!

 

染谷将太くんのぬぼーっとした佇まいと、にへらっとした笑顔が、”なあなあ”で山の暮らしにフィットしていくのがぴったりだった。劇中何度も笑ったし、他の観客もよく笑っていた。

あと、1年の林業生活を経てむきむきに引き締まったカラダへ!とかではなく、最後までぷにょぷにょなお腹や乳でふんどし姿になっていたのですごく好感を持った。