ひとりごとをしゃべりながら足早に歩くおじさんの背中には「KANI」の文字

ウィンドブレーカーの背中に大きく「KANI」ってあったのさ。カニってブランド、あるんでしょうか。

 

中学から続けてて、高校の2年で受験に専念したいからってやめちゃった部活、いまだにその夢を見る。受験を理由にしたけど、本当は実力とか人間関係から逃げちゃったんだよね。今ならそうはっきりわかる。

残した後輩とかお世話になった先輩、もうちょっとちゃんと向き合うべきだったなって思う同期の子たち、そういう人たちへの罪悪感とか未練がたっぷりの、あとあじも居心地も悪い夢を、大学を卒業した今でさえ結構頻繁に見る。

吹奏楽部だったから、楽器を吹くんだけど。大抵は、途中でやめたっていう前提はそのままで、でも部活にまた戻ってきましたっていうそんな設定で、後ろめたさを感じながら、吹き方を忘れた楽器をぎこちなく吹く。

いつも、曲を演奏するんじゃなくて、基礎練習にも満たない、音をぷーぷーって出すだけ。

 

今日昼に見た浅い夢は、その楽器を吹く感覚が鮮明だった。

音階をひとつひとつ確かめるように吹く。ぱーぱーって息を吹き込むと、頭のてっぺんに振動が抜けていって、ああこんな感じだった、って懐かしくなった。

金管楽器だったから、つばが楽器内に溜まってて、途中フツフツって音が混じるようになって。そのときの、空気が口の中に圧力になって戻ってくる感じ。抵抗感。

あ、つば溜まってる、って思ったらふっと目が覚めた。